二人とも病んでるだけの中身のない話。
モブアス表現あり。
いきなり始まる。
ちょっぴり背後注意。






あいつを泣かせるやつは俺が全員ころしてやる。




近くにあった野球のバットを持った。振り上げた。窓が割れた。侵入した。中にいたのは男だった。6人だった。そいつらが甲高い悲鳴をあげた。あまりに五月蝿くてバットで殴りつけた。呻き声がした。気持ちが悪かった。またバットを振り上げた。ふり降ろした。骨が砕ける音が聞こえた。ばき。もう一度。ばき。何度も何度も繰り返した。ばき。赤色が流れた。横では一人の男が震えていた。振り上げるのが面倒くさくてそのまま拳で殴り付けた。男は泣き出した。鳴き出した。殴るたびに嫌な音が聞こえた。血が流れた。赤黒かった。無視した。勘弁してくれ、助けてくれ。無視した。また液体が流れた。手が汚れて不快になった。男は動かなくなった。無視した。殴り続けた。不快になった。



***



アスベルは目を疑った。疑わざるを得なかった。
起きる前はただただ地獄だった。自分は犯す男達。嫌だと泣いても、やめろと喚いても、止まることを知らない幾つもの手。割り開かれる身体。汚される自分。それでも犯されながらもずっと考えていたのは彼のこと。苦しくても、辛くても、彼の顔を思い出せば気が楽だった。自分を一番愛してくれる、愛しい人。あぁ、彼に会いたいな。そんなことを願ったりなんかして。




「………ゆ………り………?」





目を覚まして一番最初に現れたのは愛する人だった。先程の願いは叶ったのだ。無理やりに犯されたこと、そんなことは全て夢だったんじゃないか。そう言って笑い飛ばしてしまいたかった。ユーリに抱き締めてもらいたかった。でもできなかった。何故?彼は血の直中に立っていて、彼の手にはひしゃげた野球バットがあったから。嫌な予感がした。目を彼から少し横にずらすと、何かが………何か赤黒いものが転がっていた。纏まらない頭でぼんやりとそこを見つめた。見つめて見つめて見つめて………そういえば、男達はどうなったのだろうか。なんとなくそんなことを思って………体が震えた。ユーリ。まさか。込み上げてきたのは甘ったるい言葉なんかじゃなかった。吐き気だった。男たちはどこにいったのか。その疑問は解消された。



「ユーリ………?」



彼は血の中にたたずんていて、 彼はひしゃげた野球バットを持っていて、
彼自身やバットにも血がこびりついていて、
でもそれは彼の血なんかじゃなくて、
彼の傍らには赤黒い物体があって、
俺を犯した男たちはどこにもいなくて、
赤黒い物体があって、
俺を犯した男たち赤黒い物体男赤黒いはどこにもいなく赤黒い物体、赤黒い物体犯した赤黒い物体、



俺を犯した男たちは赤黒い物体になって、





「う、………うぉえ……う……うぁ………」
「………アスベル?大丈夫か。立てるか?怖かったな、もう大丈夫だからな」
「………ひ、………う、ぇっ………」



吐き気が止まらなかった。
散々男達に飲まされた精液のせいなんかではない。無理矢理犯された自分の身体に残る倦怠感のせいでもない。彼が、誰よりも愛しい彼が………汚れた。俺のせいで彼は汚れてしまった。あの大きくて、いつも俺を優しく撫でてくれる彼の掌が、ろくに知りもしない男達の汚い血で汚れてしまった!!



「ごめ……ゆ、り………!ごめ、なさ………!」
「何でお前が謝ってんだ」
「ごめ、なさ………ごめんなさい………ごめんなさい………!!」
「アスベル………?」
「ごめんなさい………ごめんなさい………」




貴方を汚してしまってごめんなさい。
貴方を傷つけてしまってごめんなさい。
貴方を愛してしまってごめんなさい。





でも、何より






「ユーリ………」



あぁ、ユーリ、ごめんなさい





離してあげられなくて、ごめんなさい。







両依存性症候群